黒薙川

宇奈月温泉からのトロッコ電車の駅がある黒薙温泉で黒部川に合流する黒薙川は上流で北又谷と柳又谷に分かれている。この合流地点に北又堰堤がある。北又谷を進むと朝日町小川温泉元湯からの林道と交差する。林道はここで終わり朝日岳への登山道となる。この辺りは北又発電所があったりして整備されていた。新設されたダムのバックウォーターを更に行くと旧魚止滝があり、それを超えたところから釣り師、沢登り師が憧れる、いわゆる北又谷だ。ここについては後程に。今回渡辺さんと行ったのは小川温泉元湯~北又発電所~北又堰堤~黒薙~宇奈月温泉と釣り師らしからぬ下降コース。

私の足が(有峰・東谷でのトラブル)直りかけたのを見計らって声がかかった。「北又の上流は無理だが北又発電所から下って見ないか」う~ん、足はまだ痛むが梅雨明けも迫っていて最後のチャンス。渓の遡行とトロッコに乗った記憶はあるが閉鎖されている小川温泉元湯からの林道をどうやって北又発電所まで行ったのか定かでない。翌年は渡辺さんのバイクで行った。渡辺さんが作業服にヘルメット姿でゲートの鍵を預かる元湯のフロントに行き道路視察と称して鍵を借りた事があった。この時だったんだろうか。帰りの宇奈月温泉からは電車がある。ともあれ土曜の午後出発し夕方北又発電所に着いた。雨だった。翌日の行程短縮の為下って(これが大失敗)河原にテントを張り小宴会で眠りに着いた。雨は続いている。なんと夜半に増水で水がテントまで来てしまった。浸かった。何だ何だと外へ飛び出し二人でテントを引っ張り避難。すべてびしょ濡れ状態。テントの水を掻き出し、絞れるものは絞ってテント内にぶら下げた。事もあろうに渡辺さんはパンツまでぶら下げた。眠れず朝を待った。2時頃には雨音がしなくなった。薄明るくなった4時過ぎに外へ出ると水もだいぶ退いていた。暫くタバコを吸いボォーとした後、辺りを見回しザイルを張れる場所を見つけテント内のすべてをぶらさげた。もちろん渡辺さんのパンツも。珍しく渡辺さんは眠っていた。そして目の前のポイントに竿を出すと即座に尺をゲット。「渡辺さん、釣れたよ」と。渡辺さんも起き出し釣りへ。私は朝飯の支度にかかった。やはり渡辺さんはちゃんと2.3本持ってきた。尺はいなかったが。朝食の頃には青空が見えてきた。

柳又谷
柳又谷

テントの水気を切り下降開始。黒薙までの所用時間が掴めていないので丹念な釣りは控え前へ前へと進む。絶好のポイントはあるもののカンカン照りであまり釣れなかった。そして北又堰堤に到着。柳又からの流れをみてビックリ。真っ白に濁っているではないか。まるでセメントを流しているような。上流での工事などありえない。この時期に雪シロなのだ。少し歩いて奥を覗く。とにかく凄い。こんな中、植野稔を始め凄腕の釣り師は遡行しているのだ。私にも行く事ができるのだろうか?雑誌に載っていたエスケープルートは何処にあるのだろう。そんな事を思いながら堰堤を後にした。

ヘッドランプを持ってて良かった
ヘッドランプを持ってて良かった

北又堰堤からは真っ暗な点検坑を歩いた。1時間以上は歩いたのだろうか?点検坑を出ると黒薙川沿いに道があった。下を見ると渓相は良いものの降りて釣る気にはなれず。途中フライマン二人に会った。格好良過ぎる。泥臭さがない。この手はろくな奴しかいない。有峰真川の長野組と同じだ。それはともかく黒薙温泉に到着。宿に入浴代を支払い、いざ露天へ。上から覗くと先客がいた。アベックか夫婦か若いカップル。ここは混浴、飛び込んでもなんら問題なし。がしかし待つことに。二人が上がるのを確認して入った。「おい、若い女の子がくるかも。ゆっくり入ろう」でも来たのは爺さん 一人だった。 

びしょ濡れになったり汗だくになったりした体を癒した後に着替えがなく泥んこで汗臭いシャツにズボンを穿いて宿の裏のトンネル階段を下りトロッコ駅へ。切符を買い乗り込むと、車掌が来て荷物は後方の荷物置き場へ、こちらの車両にかけて下さい。何だ、皆と一緒は駄目なのか。特別席は風通しが良く遮る窓もなく鉄格子のみで快適だった。