いざ長棟川へ(大池谷)
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初めての大池谷
ついに長棟川へいった。安保師匠が最も薦める渓。メンバーは渡辺、番場(安保師匠の同期で岩魚釣り経験ほとんどなし)私の3名。何故か安保師匠は居なかった。教わったとおり小坂の部落から林道(悪路)に入り登りきった桧峠にゲートが有り進入不可。ザックを背負い林道を2時間近く歩くと奥山発電所へ下るゲート着。本当に奥の山だった。下って発電所の柵を超え更に敷地を囲う柵伝えに進み、とうとう河原へ。水は腰近くまで有りそうだ。私が先頭をきり渡渉開始、流れが速い、慎重に渡りきると、そこは今回の目的地である大池谷の入り口。雪シロがまだ治まらず本流では渡渉不可能箇所があるという事でこの支流に。少し登ると立派なテン場があり荷物を降ろし一服。テントを張りキャンプの準備をあらかた終え渡辺さん等はたき木集め、私は少し釣って見る事に。小さいのが2.3本釣れた。明日が本番。ワサビを確認してテン場に戻る。この時が渡辺さんと初めてのキャンプだった。翌日への期待や山の話。同郷の番場ちゃんとは新潟の渓や山菜の話で盛り上がった。翌朝朝食を済ませ大池を登っていく。安保師匠によると本流を挟んだ対面の山に設置されている送水管が見えなくなるまで歩き、そこから釣り始めるのが良いという。これまでで一番の淵を巻いたところで送水管が見えなくなった。早速竿を出す。がしかし釣れない。とにかく釣り上がるがサイズが小さい。そうこうしているうちに後方から人が。私達をまくようにして上流へ行ってしまった。今でこそこんな行為は咎めるがその頃はまだ初心者でボォーと見送ってしまった。先へ進むがあまり釣れず、また先を越された事もあり納竿。ワサビを採りテン場に戻り昼飯。それでも何となく満足感にひたれて帰途に。昨日よりも増水している。当たり前だ。昨日は夕方近くで今日は雪シロが最盛期の時間帯。渡渉途中私の後方の渡辺さんが流れに足をとられ流されそうになり慌ててザックを掴んで引っ張り難を逃れた一幕もあった。水は本当に怖い。数年後私は増水時のエスケープルートを見つけ現在はそちらを通っている。渡渉後着替えて林道を桧峠へ。思い出した。この頃土曜の午前中は仕事で午後出かけたのだ。
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本来の大池谷
なんと3日後、私と渡辺さんは再び大池谷にいたのだ。前回帰宅後安保師匠に釣行の報告をしたところ、その程度の釣果の渓ではない。信じられないと。う~んそれではと渡辺に話すと再度日帰りで行く事に。早朝の本流は水量も少なくすんなりと渡渉できた。好天の中2度目とあって気楽にアプローチできた。もちろん先行者も居なかった。写真がないのではっきりしないが相当釣り上げたに違いない。渡辺さんは山椒魚を採って自分の餌にしていた。
大誤算の大池谷
桧峠からの林道歩きを何とかできないかと思案、まだゲートの鍵は入手できず。それでは自転車でと、幸い私の車に何とか2台積み込めた。今回は岐阜県側の茂住から峠を越えて入渓する計画を立てた。釣り場は地図に出ている本流の赤い橋から上流の金山谷を目指した。茂住峠を越え下ったところでゲート。それにしても悪路だった。何度車の腹を擦ったのやら。それはともかく自転車を下ろし一路渓へハイスピードで進む。もちろん舗装などされておらず時々飛び跳ねながら。すぐに赤い橋に到着。「近すぎるなあ~」「もう1本あるかもしれん」「ちょっと下ってみよう」これがとんでも無い事になったのだ。下りで楽だが行けども行けども橋など無い。そしてついに奥山についてしまった。なんという事だ。あの最初の橋が紛れもなく目的の赤い橋だったのだ。今から戻ったら釣る時間が無い。どちらともなく前回釣れた大池に入ろうと。部分舗装してある発電所への下りでブレーキが切れてしまった。大池はとにかく釣れた。藪もたいした事無く時間を忘れて釣った。
魚止めに着き時計を見ると4時を回っていた。駆け下って本流出会いについたのが6時過ぎで林道にでたのが7時前。どう考えても車に戻るには4時間近くかかる。このまま桧峠へ向かい自転車で帰ったほうが早く安全と判断した。ペダルを漕ぎ出すとすぐに真っ暗になった。おまけにブレーキは効かないのだ。それでも桧峠までは比較的に順調に行ったが下りになり転倒の連続でそのうちライトも消えた。わずかに照らす渡辺さんの後を必死に追うがブレーキが効かずまた転倒。気が付けば後ろに積んでいた魚籠と胴長がない。なんという事だ。おまけに腕や頬の辺りから血が出ているようだ。あと少しで集落が有り舗装道路だ、今更引き返して捜しに行く気にもならず。舗装に出てほっとした。家に着いたような気分だった。しかしここは小坂、家まであと何キロあるんだろうか(後で調べた20キロ以上あった)また漕ぎ始める。渡辺さんと別れ帰宅したのは午後10時前だった。連絡もなく遅かったのと擦り傷だらけで泥だらけの私の姿をみてカミさんは青ざめた。この一件以降私が渡辺さんと出かけたら何時帰るか分からぬものと覚悟したようだ。翌朝がまた大変、4時前に渡辺さんが車でやって来て桧峠に向かった。昨日落とした魚籠と胴長を捜しに行った。しかし見つからなかった。脇を流れる黒川に落ちたんだろうか?時間がなく(9時から仕事)あきらめ国道41号に出て茂住へ向かった。峠を越えゲートに。私は自分の車に乗り換え林道を下りて国道に出たところで後ろからパッシング。路肩に寄せると渡辺さんが降りてきて「何かハンドルがおかしい、上手く切れないなあ~」渡辺さんの車は車高が低かったのだ。茂住林道の悪路、腹を擦り続けたり飛び跳ねたショックでシャフトがおかしくなったんだろう。走行は可能という事で会社までもたせた。予定通りまだ誰も出勤していなくて一安心。着替えて何事も無かったかのように席に着いた。
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藪の中の大池谷
この年の夏前に桧峠のゲートの鍵を手に入れた。渡辺さんがどこからか拾って来てくれた。しかし鍵は時々換えられた。その後数年は変わっても私が拾ってきたのだが現在はそれも不可能となってしまつた。苦労が減りカミさん連れて行く事が可能になり本流との合流地点でテントを張り翌日釣るという最初のパターンで出かけたのだった。歩き始めて先ず自分の背丈を超えるシダ(コゴミ)の藪、春には他と違う立派な太いコゴミが採れ喜ばせてくれたのだが育ち過ぎた夏にはすべてを覆い隠し先が見えず。なかなか先に進めず川の中を、これまた覆い被さる木々の下を縫うようにして進むしかなかった。1時間程かけて釣り始めるポイントに到着。多少は歩き易くなったものの藪は続いた。そして渇水状態。竿を出せるポイントに振り込むと5、6匹が寄ってきた。小物が真っ先に集まってくるので餌を動かし散らせ親方を待つという夢のような光景だった。しかしもうこの時期に行きたいとは思わない。行きも帰りも藪の中。岩魚達に秋の産卵に向け静かに過ごしてもらい春の水量の多い時に駆け引きしたいと思った。