岩魚が消えた?(2002

 

今年は既に長棟川を3回も満喫し少し休もうかと思ったのですが、何かもう一つ足りない。そうだ名古屋の渡辺さんに久しく会っていないのだ。早速電話すると明日にでも一緒に行こうと言うほど元気な様子。それではと勤務表を見ながら日程調整し6/12~6/14で行って来ました。12日は渡辺さんの都合で夕方6時に中央道の伊那ICで待ち合わせ高遠町を通り長谷村に向かいました。今回の目的地は南アルプスの甲斐駒ケ岳、仙丈ケ岳の長野側です。三峰川支流の小黒川の戸台(登山道入口)の河原でテントを張った時には薄暗くなっていた。いつものおかずで酒を飲みテントに潜り込む頃には2人ともヘロヘロ状態。渡辺さんの朝は早い。4時に起きガサゴソし始める。5時過ぎに朝一番の釣り開始。目の前の小黒川は道路沿いで小さな山女魚ばかりで気が進まず1時間打ち切り朝飯に。食いながら三峰川の上流へ行こうと相談していると下流から釣り人が。年配のおじさんで話を聞くと登山道沿いの戸台川の上流に行けば水量も豊富で尺も出るという。ただし登山道とはいえ伏流し水のない川を1時間以上歩かなくてはならぬ。渡辺さんはあまり乗り気でなかったが半ば強引に決め8時に出発。実はこれが正解だった。強い陽射しの中をひたすら歩く。1時間程行くと水量も増え始め竿を出すことに、それなりのポイントは有るものの2人ともまったくアタリ無しが続く。帰りたそうな渡辺さんに「次は釣れる、尺が出る」励ましながら先へ進む。本流にはまったくいない川虫を採ろうと支流に入りしゃがんでいると「おお~い、タモ」と叫ぶ声がする。駆けつけると渡辺さんの竿が見事にしなっているではないか。対岸から引き抜く仕草をすると、わかったとばかり渡辺さんは魚を寄せにかかり上手く河原に上げた。でかい、尺はある。魚体は黒く異様なまでも濃い朱色の腹、こんな岩魚を見たのは初めてだ。33cmあった。俄然やる気が出る。しかしアタリはあるもののバラしてばかり。渡辺さんがまた良型を釣り上げる。これも先程と同じ色。ここで渡辺さん得意のかき混ぜインスタントラーメンで昼食。物持ちの良い渡辺さんのザックから色んな食べ物が出てきた。午後、開始一番目のポイントで漸く一本。その後もポツポツと釣れる。私はリリースサイズが多かった。そして左右に分かれて竿を同時にしならせ引き抜いたところでお終いに。上を見ると人が立っているではないか。釣ってる様子はない。近づき話を聞くと登山者だった。目の前の林の中に丹渓山荘(廃屋となってた)があり今夜はここに泊まる予定だという。時計を見ると1時半、登山道を教えてもらい煙草を数本渡し下山。2時間半でテン場に到着。明日の釣りの為に三峰川上流へ移動開始。ところが国道をはずれたとこで舗装工事の為全面通行止。明日も通れないという。もう一箇所の山越えコースは廃道らしい。この先に部落はないのだろうか?地図だとありそうだが、そこの人達はどうするんだ。しかしあきらめるしかない。朝来ていたらもっとがっかりしていただろう。こうなると他にめぼしいい渓もなく高遠町に戻り山室川の上流へ。川沿いの丁度良いテン場が見つかり夕食の準備開始。水も焚き木も充分あり大物の塩焼きに期待が膨らんだ。6時には飲み始め楽しい宴の始まり。40年来のコッヘルを差し出し「これ美味いから少し食ってみろ」、中には米粒のような物が入ってた。何か?と聞くと蟻の卵だという。私が川で岩魚をさばいている間に採ったらしい。こんな物食えないと断ったがあまり勧めるので仕方なくつまんでみる。お世辞にも美味いとは言えない味。気を良くしたのか渡辺さん「お前、モグラ食った事あるか?あれは美味い、今度会う時獲ってきてやるよ」いらん、いらん。そんな物、見たくも無い。そうこうするうちに岩魚もかぶりつく。尺物はじっくり朝まで焼いて渡辺さんのお土産用に。酔いもまわりチャーハンを食い焚き火の岩魚8本が夜中に倒れないようにして9時過ぎにテントに入った。夜中の2時頃だろうか用足しに起き、焚き火を見ると消えている。岩魚がない。渡辺さんが雨でも心配して何処かに片付けたのだろうと思い再び眠りに就く。5時半に目覚め隣を見ると、やはり寝袋は空っぽ。さすがは渡辺さん。コーヒーを飲みのんびりしていると、渡辺さんがにこにこしながら帰って来た。「ここは駄目だ、水が少ない」といいつつも岩魚を1匹ぶらさげて。「焚き火の岩魚をどこへやっ た?」 「え、渡辺さんがかたしたのでしょう」 「いや知らんよ」 「そういや夜中に見た時なかったなあ~」 「自分も2時に見たけど無かった」 「串ごと無いんだから、誰か持っていったか?」 「人は有り得ないですよ。いくらなんでも車の音やライトに気付く筈ですよ」 「そうだなあ~、人間じゃないなあ~、狸にやられたか」 「ここで食わずに1本ずつ運んだのかなあ?」その後辺りを見回すと草むらの中に自分達のゴミ袋があり破れていた。犯人は狸か狐に間違いなさそうだ。あきらめるしかない。渡辺さんの尺物が、トホホ・・・・・・・食べ残しや食べかすが朝になるときれいに無くなっていたのはこれまでにも何度かあったが串ごとやられたのは初めてだ。テントをたたみ下流に行く事に。山室川を覗いてみるが、典型的な里川で気分が乗らず。おまけにカンカン照り。三峰川との合流地点まで下り原っぱでプシュッと缶を開け朝飯にする。やたら小さな蝶が多い。車に数十匹まとわりつき、道路にも羽根をたたんだのが地面を覆っている。不思議な光景だ。酔い覚ましに渓へ降り釣ってみる。山女魚の子供ばかり。おまけにウグイ混じり。昼前に納竿。伊那ICへ向かって走り出す。渡辺さんは隣でスヤスヤお休み。IC手前のお土産屋で「ローメン」を買う。ラーメンでもヤキソバでもない不思議な食べ物だった。再会を約束して渡辺さんとお別れし松本、中野、十日町を通り自宅に着いたのは夕方だった。