魅惑の核心部(2008

 

 

長棟川核心部に入ったのは何年振りなのだろうか。渇水で干上がり窮地に陥ったイワナ達に遭遇して以来のような気がする。これまで幾度となく入渓した場所。恐怖もあれば感激もあった。脇の林を下れば安全なのにあえて草付きのないガレ場をヘツって下りたりもした。足を滑らしたら大怪我どころではなかったのに。奥山から唯一の橋が有る箇所から取水口の手前までのゴルジェ区間を核心部と呼んでいる。橋から数百メートルは平坦だがその先からは急に渓が狭まり険しいゴルジェ部。入口の淵は以前さほど深くなかったが現在は泳がなくては渡れない状態だ。単独で入った時にこの淵から前方の大岩に登りつく為岩の上に置き竿をして登り竿を持ったらなんと尺物がかかっていた等と信じられないような事もあった。薄暗く神秘的な好ポイントを過ぎると最初の通らずに出くわす。ここは左岸の草付きを高巻きなのだが掴まれる木が少なく下を見るとぞっとする高さのトラバースで最後は木にぶら下がってようやく通過。そんな場所を渡辺さんはトラロープで降りたんだっけ。大抵はこの高巻いた場所に林道から降りて時間短縮していた。下から見上げると到底不可能とも思えるガレ場を降りて来ていたのだ。この先に絶好の淵がある。渇水時に悲惨な光景を目にしイワナを運んだ場所。振り込むといつも尺クラスがすうーと寄ってくる浅瀬、岩に囲まれた円形の深い淵。そして2箇所目の通らずが、ここも絶好のポイントで必ず顔を出してくれた。初めての入渓の際、渡辺さんと恐怖のヘツリで高巻いた場所。その後は水に入り少し行くと岩肌に足掛かり箇所がある事を見つけ何とか岩の割れ目に指をかけ懸垂で登る事でクリアーできる。もしも落ちても水の中。林を抜けここも木にぶらさがり下りる。ここの通らずもトラロープで降りた事があったが区間が短くクリアー後に渡渉し下った岩の上から十分に楽しめた。核心部一番の綺麗な瀬から素晴らしいポイントの連続の後に最後の通らず。切り立った先に見えるのは落差20m?の滝と滝壺。以前はあまりえぐれてなく腰ぐらいの深さだったので簡単に行けたのだが現在はかなり深くなってしまった。一度だけ左岸を高巻いた事があったが凄い藪で枝葉のかき分けに苦労した記憶が有る。そして滝の上に出るとゴルジェ地帯は終わっていた。また銀砂谷が合流していて取水口(跡地)があり林道から容易に下りられた。そんな事で核心部はこの滝の落ち込みまで。いつもここで納竿し右岸を林道への急登に最後の体力を。これがなかなかの薮漕ぎ。長棟川は渓が深く何処をよじ登っても醍醐味を味わえる。

 

いきさつは忘れたが7/12~13安保師匠と入渓。5時に出発し富山ICから41号線を岐阜方面に向かい8時茂住の駐在の脇から林道に入ったのだが予想以上に整備されていて驚いた。1時間かけて山を越え旧長棟部落への合流地点の先の橋を渡ったところでゲート。随分立派なゲートに様変わりしていた。既に先行の車が2、3台あったが金山谷か赤い橋付近の本流のはずで核心部とは考えられず。そういえば核心部で先行者にというより人にあった事はこれまで一度もなかったのだ。自転車に乗り換え快調に下っていくと本流に二人の姿が見えた。考えてみれば金山谷、広川との合流手前の赤い橋から上流の本流はあまりに入渓し易く入った事がなかったのだ。まったくもって楽チンの下り走行で赤い橋に到着。

 

 

 

核心部目指してさらに下る。帰りはキツそうだが自転車は止まらない。トンネルを抜け最後の通らずの上で自転車を置き徒歩でさらに下り目的の弥谷への橋に10時着。とにかく感激、感激、やっと来れた。ここ数年何度こようかと思った事か。師匠に感謝。橋から上流が核心部で下流は師匠さえも未知の私だけのサブ核心部。

 

 

 

「よし行くぞ」と水辺に降り立ち準備を始めたところで「あれ?足りない」。小継フライロッドの一本がない。西港のサワラに持って行かれたのだろうか。幸い私が持って来たテンカラ竿に自前のフライで。最初の一本は二人共可愛い子供に挨拶。その後は次々と良型が食いついた。まだ核心部手前なのだが。この時期にしては不思議とスマートな体型だった。

いよいよ核心部入口へ、私が最初に振り込むと餌が沈まぬうちに5、6本が寄ってきた。なんという光景だ8月の大池を思い出した。見つめていたかったが食いつき持っていかれたので仕方なく引き抜いた。再度振り込んでも同じ光景だったが釣らずに竿をおさめた。今度は師匠が楽しみ通らずの遡行準備。

師匠が飛び込み淵の先で岩に取り付けるか偵察に。結果可能だったが泳ぎの苦手な私は高巻きで合流。しかし難関は続いた。川底がえぐれ深くなっていたのだ。草付きまで登って巻いても降りれる保障はないし時間がかかり泳ぐには流れが速すぎる。迷ったが以前と同じ右岸を腰上まで浸かってヘツルしか無かった。滑ったら沈んでしまう。何とか通過。すぐに第二の通らず。ここも振り込むと数本が寄ってきた。しかしすぐに竿を納めて左岸の草付きを高巻き。抜けそうな草を掴まないよう気をつけながら慎重にトラバースして一気に下り立った。

足元をゆったり泳ぐイワナを見たり懐かしい大きな淵、大物が走る瀬を過ぎると第三の通らず。ここはすんなり岩肌を登り通過。時間を気にしながらも十分に核心部を満喫し最後の大滝着いたのは15時。滝壺は眺めるのみで納竿。林道へのキツーい登りが待っていた。

 

 

お~い 後から熊さんが。あと一歩だ。

17時 赤い橋で一休み。ここからは自転車を引きずっての登り。車に戻ってテン場を探さなくては。

ゲートに着いた時には他に車は見当たらなかった。橋の近くをテン場にしようと林道を戻ると既にテントが張られていた。水場の近くを目指すのは皆同じ。旧長棟集落へ向かう林道を進む。道というより藪の中を走っているようだった。急に開け社らしきものが見え平地が広がっていた。初めて来た。都合よく脇を長棟川本流?が流れていた。決定。最高のテン場。墓が並んで少し不気味だが。

 

 

19時 釣り師からコック長に転職した師匠は巧みにイワナを裁き刺身に天ぷら。私はテントを設営し近くの竹林で時期外れのネマガリタケを少し採取。雨の心配もなし。熊の心配もなし。車横付けの楽ちんキャンプ。贅沢にテントも各々一戸建て。

22時 ヘッドランプが重いのかな~
22時 ヘッドランプが重いのかな~